第一回春日忌俳句大会 大高 翔 選
※本俳句大会では「春日の忌」を季語として使うことも認めて選句しています
◎特選三句
白柔き豆大福や春日の忌 西浦 風
「豆大福」と「春日の忌」の取り合わせがすばらしい。
局の名である“斎藤福”と関連させながらも、いわゆる“つきすぎ”にならず、絶妙な取り合わせ。
「白柔き」が、信念を持ったしなやかな人物像とも重なってくる。
さりげなく自然な表現で、春日忌らしい一句をなしている。
都営バス二番で参る春日の忌 川合 牛蒡
具体的で「都営バス二番」という情報が、句材としてかなり新鮮。
「参る」という謙譲語が効果的で、「春日」を敬う気持ちを感じさせる。
現代の乗り物に乗って、時代を越えて「春日」のもとへ、という気分がある。
爽やかに偲ぶ春日忌楠のかぜ 岡本 俊夫
「爽やかに」という季語で、「楠のかぜ」の心地よく吹く「春日忌」の情景がよく見えてくる。
「偲ぶ」という心のなかの思いを、外の情景へとうまく繋げて表現している。
内と外の世界が一体となり、大きなスケール感がある句だ。
〇入選句五句
山門を抜け爽籟の只中に 井上 裕太
「山門」「爽籟」の語が重々しく格調高い。
麟祥院を訪れた作者は、心を洗われ背を正されたような感覚を味わったのだろう。
「只中に」の下五がドラマチックで、強い印象を残す。
ドーナツを買うて帰らん春日の忌 田中 かんな
「ドーナツ」の取り合わせが楽しい。
墓形からイメージを飛躍させ、あえて軽やかに詠んでいる。
「春日の忌」を、作者の日常にぐっと引き寄せた点に注目した。
北辰の輝き増して春日の忌 尾原 遊歩
「北辰の輝き」に、作者の春日局像がしかと反映されている。
作者のなかに、ありありと人物像が存在することが、「増して」から感じられ、
この句の力強さとなっている。
あの頃を月に打ち明け春日の忌 平間 槐
「あの頃」が読者の想像を広げる。
「月に打ち明け」ているのは作者ながら、ひょっとしたら、春日局の姿でもあるのかもしれない。
古人に心を寄せる楽しみをもたらす句だ。
春日の忌装ひあらた禅の庭 中川 琥珀
当日の「春日の忌」の非日常感が、「装ひあらた」で清々しく伝わってくる。
いつもの「禅の庭」に愛着を持っているからこその、観察が活きている。
特別な日の、静けさと華やぎが感じられた。